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【ボカロ調声のコツ&テクニック⑥】DAWでのボーカル処理について【Vocaloid】

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DAWでのボーカル処理について

DAWでのボーカル処理について

こんにちは、ムセキ(@nagoyakampo)です。

趣味で作曲をしていて、過去にはボカロ曲が市販されているゲームに曲が採用されたこともあります(PSP「初音ミク -Project DIVA-」の「猫なキミ」:774P名義)。

また、サブスク等でボカロ曲を配信しています(774P名義)。

今は歌の無いインストゥルメンタルを中心に作曲していますが、昔自分がやっていたボカロ調声について、方法などを詳しく書いておこうと思い立ちました。

今回の記事の内容は、「ボカロ調声におけるDigital Audio Workstation(以下DAW)側での仕上げについて」です。

エディタソフトでエクスポートしたWAVファイルは、DAW側で処理し、伴奏であるオーケストレーション(以下オケ)とミックスダウン(以下ミックス)する必要があります。

その辺りについて、詳しくご紹介していきます。本記事は、以下の順番になっています。

DAW側の処理が重要である理由

ボーカル処理の方向性と準備

最初は音量調整

ピッチ調整エフェクトで整える

コンプレッサー・リミッター

EQ

その他エフェクト

コーラス

ディレイ&リバーブ

色々なスピーカーやヘッドホンで聴いてみる

さいごに

僕は普段、DOMINOというMIDI編集ソフトとVocaloid3 Editorを使用してボカロ調声をしています。

しかし、その後のボーカル(歌声)をDAW側でもちゃんと処理しないと、最終的な仕上がりが悪くなってしまいます。

少しでもお役に立てたら嬉しいです。それでは、お読みください。

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DAW側の処理が重要である理由

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ボーカルは一番目立つので、DAWでしっかり処理することが大切です。

ボカロ調声の最終段階はDAWでのボーカル処理です。この部分の処理がしっかりと出来ないと、せっかく頑張ったボカロ調声が水の泡になってしまいます。

一所懸命曲を作って、歌詞を書いて歌わせて、と来ていますので、最後、もう一度気合を入れ直して取り組んで下さい。

終わりよければ全て良しですので、あと少し頑張りましょう。

ボーカル処理の方向性と準備

Museki
ボーカル処理の方向性を決め、それに対して準備していきましょう。

ボーカル処理の方向性

まずは、ボーカル処理の方向性を決めます。というのも、曲のジャンルによって、求められるボーカルの処理が違うからです。

バラードやピアノ曲ならそれほどボーカルの音圧は上げずに柔らかい声を目指しますし、逆にロック等では音圧を上げて固い声を目指します。

全体の方向性を決めておくことで、後々迷わずに作業を進めることが出来るようになります。

方向性が決まったら、次にボーカル処理の準備に入ります。

ボーカル処理の準備

ボーカル処理の準備は、いつも作曲に使っているエフェクトとライブラリアンの準備です。エフェクトの準備は大丈夫だと思いますので、割愛します。

ですが、ライブラリアンについてはご存じない方も多いので、詳しくご紹介します。

ライブラリアンの準備

ライブラリアンというのは、「ミックスやマスタリングで物差しにする、作る曲と同じジャンル曲」を言います。

WAVでもMP3でも良いので、CD等から取り込んでDAWに空トラックを作って貼り付けてください。貼り付けたら、一旦トラックをミュートして無音にします。

ライブラリアンは、上でご紹介した通り「物差し」になります。

今作っている曲のボーカルの音量やエフェクトのかけ具合等、ライブラリアンを聴いてその質感を目指してミックスしていきます。

そうすることで、後々、数曲まとめてアルバムにした時、各曲の品質を一定に保つことが出来ます。単純に完成度も上がるのでお勧めです。

それでは、具体的なライブラリアンの使い方をご紹介します。

ライブラリアンの使い方

ライブラリアンの使い方は、最初、ライブラリアンの入ったトラックのみ鳴らし、その聴いた感じと同じ質感になるようにボーカルトラックをミックスしていきます。

つまり、仕上がりの目安にするという訳です。

ライブラリアンを使うことで、ボーカルとオケの音量バランスやエフェクトのかけ具合のバランスを随時見ながら調整できるので便利です。

それでは、次の段落から具体的なボーカル処理についてお話していきます。

最初は音量調整

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ボーカルをトラックに貼り付けたら、まずはオケを切って音量調節をします。

Vocaloid Editor等からエクスポートしたボーカルを、まずDAWのボーカルトラックに貼り付けてください。

トラックに貼り付けたら、オケを切ってそのボーカルのみ聴いてチェックしていきます。聴いていると、不自然に声が小さくなっている部分があるはずです。

実は、ボカロはこのようなことが多く、コンプレッサーやリミッターだけでは均一に出来ない場合があります。その辺りを予め処理して問題を消していきます。

不自然に小さくなっている部分の両サイド、無音部分でクリップを切り取り、その切り取ったクリップの音量だけ上げましょう。

そうすることで、ピンポイントで前後の声量との差異を無くすことが出来ます。クリップの音量調整が終わったら、一度バウンスして一本のクリップにまとめます。

そこまで終わりましたら、次にピッチ調整に入ります。

ピッチ調整プラグインで整える

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ピッチ調整プラグインで、音の外れた部分を矯正します。

声の音量を処理したら、ピッチ調整プラグインで音程の矯正をします。有名所では、「メロダイン」があります。

僕は、上記「メロダイン」と、昔SonarというDAWについていた「V-Vocal」というピッチ調整ソフトを使っています(残念ながら単体での販売はありません)。

ボカロ調声のエディタで音程は問題無くなっていると思いがちですが、実のところポルタメントのかかり具合が悪かったりして結構音程がズレていたりすることがあります。

オケとボーカルどちらも鳴らして、音程のズレがある部分をチェックしましょう。ちなみに、ケロケロボイスと呼ばれる声もピッチ調整プラグインで作ることが出来ます。

メロダインは自動でピッチを合わせてくれますので、これだけあれば十分です。無料でもピッチ調整プラグインはありますが、やはり有料のものはクオリティが違います。一つ持っておくと良いでしょう。

次は、コンプレッサーやリミッターをかけていきます。

コンプレッサー・リミッター

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ジャンルによって違いますが、しっかりと音圧を稼ぐことが大切です。

コンプレッサーやリミッターというのは、ダイナミクス系エフェクトと呼ばれ、音圧(単位時間当たりの音の大きさ)を稼ぐという効果があります。

オケに負けないようにボーカルはしっかりと目立たせる必要がありますので、これらを使って音圧を稼いでいきましょう。

ちなみに、どれ位音圧を稼ぐかというのは曲のジャンルによって違います。

音圧を稼ぐとどうしてもダイナミクス(音量差)が消えていきますので、音楽表現としての強弱も音圧を稼いだだけ失われていきます。

その辺りは上でご説明しましたライブラリアンを参考にしながら、定位とのバランスを取っていくと良いでしょう。

また、場合によってはEQ(イコライザー)を先にかける場合もあります。その時々で色々と試してみて、良い方を採用するようにしましょう。

コンプレッサーとリミッターはそれぞれ効果により区別されます。それぞれ、詳しくご説明していきます。

コンプレッサー

コンプレッサーは、音声信号のダイナミクスを制御するためのエフェクトです。具体的には、音声信号の最大音量と最小音量の差を縮めることで、全体の音量バランスを整える役割があります。

これにより、音楽や音声の一部が突出して大きくなったり、逆に小さすぎて聞こえづらくなったりするのを防ぎます。

処理の流れは、コンプレッサーを先にしてリミッターを後にした方が良いでしょう。

リミッター

リミッターは、音声信号のピークレベルを制御するためのエフェクトの一つです。

特定の音量を超えないように制限することで、音割れやクリッピングを防ぎ、全体の音量バランスを一定に整える働きがあります。

リミッターを使うと、音楽や音声の最も大きな部分が一定の範囲内に収まるようになります。

リミッターは、音圧を稼ぐときにも使いますが、クリッピング防止に最終エフェクトとしても使うことがあります。

EQ

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EQ(イコライザー)でボーカルの声質を調整しましょう。

EQ(イコライザー)は、音声信号の特定の周波数帯域を調整するエフェクトの一つです。EQを使用することで、音楽や音声の特定の音域を強調したり、カットしたりすることが出来ます。

結果、ミックス全体のバランスを整えたり、特定の楽器やボーカルの音の明瞭さを変化させ、目立たせることができます。

基本的に低域をEQで削って中高域~高域にかけてブーストしていきますが、やり過ぎるとオケから浮いてしまいます。

ですので、ライブラリアンと比べながらバランス調整していくことが大切です。それでは、各周波数帯域別のボーカル処理について詳しくご紹介していきます。

20Hz – 60Hz

超低域の周波数で、バスドラム(キック)が主に関与します。

ボーカルにはほとんど関係ありませんが、場合によっては低音ノイズがある場合があるので、EQにてバッサリと切ってしまうことをお勧めします。

60Hz – 250Hz

ベースが主に関係する低音の周波数帯域です。バス等の低域男性ボーカルの厚みは関係することがありますが、女性ボーカルはあまり関与しません。

場合によっては、ノイズ対策にEQで100Hz以下をバッサリ切ってしまっても良いでしょう。

250Hz – 500Hz

ボーカルの温かさや勢いに関与する中低音の周波数帯域です。

強調し過ぎると声が曇ってしまいますが、無さすぎると力不足でスカスカなボーカルになります。EQで一番調整が難しい部分です。

500Hz – 2kHz

ボーカルの声で最も耳に入る周波数帯域です。この部分を中心として、全体的に低音域は削り、高音域はブーストするような方向になります。

2kHz – 4kHz

ボーカルの抜けやキラキラ感に関わる周波数帯域です。

250-500Hz

部分と丁度反対で、強調しないとオケに埋もれたり籠ったりしますが、強調し過ぎると耳障りになってしまいます。EQ調整の腕の見せ所です。

4kHz – 6kHz

ボーカルの存在感を調整する周波数帯域です。2kHz – 4kHzと併せて、ブーストしつつ上げ過ぎないよう注意します。

6kHz – 20kHz

高音域。ボーカルの空気感や透明感を提供します。この周波数帯域は、サ行タ行の明瞭さや強さにも関わります。上げ過ぎるとサ行タ行がキツくなって耳障りになるので、上げ過ぎに注意します。

その他エフェクト

Museki
ボーカル処理で使うエフェクトについて、ご紹介します。

コンプレッサーやリミッター、EQ、後述するコーラスやディレイ、リバーブ以外でよくボーカル処理に使うエフェクトをご紹介します。

ディエッサー

ディエッサーは、サ行タ行等の8kHz以上の息が抜ける音の出過ぎているものを押さえて改善します。

ボカロは特にサ行タ行の処理が難しく、音の籠りとこの8kHz以上の音の出過ぎのバランスを取るのに時間がかかります。

ディエッサーがあれば何とかなる、という簡単なものではありませんが、使える道具としてこのエフェクトを知っておくと良いでしょう。

エフェクトの順番としては、EQの前後で使うことが多いです。

サチュレーター

サチュレーターは「汚し系エフェクト」とも呼ばれるもので、声にわざとダメージを与えて汚す働きがあります。

効果としては、オーバードライブやディストーションと呼ばれるものに近く、声が荒々しくなります。よくロックジャンルで使われます。

また、オーバードライブに近い真空管エフェクト(チューブ)と呼ばれるものがあり、声が丸く柔らかくなる効果があります。僕はこのチューブをよく使用します。

エフェクトの順番としては、コンプレッサー等とEQの間に挟むことが多いです。

MS処理プラグイン

通常、ステレオソースはL(左)とR(右)に分かれていますが、それ以外の分け方でM(ミッド)とS(サイド)というものがあります。

LRとMSの関係は、以下の式になります。

L+R=M

LーR=S

詳しくはここでは割愛しますが、簡単にお話ししますと、

M=LRの同相部分のみの音

S=LRの逆相部分のみの音

になります。

Mが主体となり、Sがそのサポートの役割を担っていますが、最近の商用音楽では、音圧を稼ぐ為にSの量を増やすことも頻繁にされています。

ですが、MS処理は沼なので、とりあえず解らなければ他のエフェクトを使いこなしてから触った方が良いでしょう。

僕は、MS処理プラグインを使う場合は、コーラスの後かつリバーブやディレイの前に使っています。

コーラス

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コーラスを加えて、声に厚みを持たせます。

コーラスというエフェクトは、元々の音声信号のピッチやタイミングを微妙にずらすことで、声の広がりや厚みを出す効果があります。

よく、商用曲でボーカルがダブって歌っているようなものがありますが、あれがコーラスの効果になります。

ボカロは元々の声が弱いので、コーラスをかけて厚みを持たせることが大切です。ですが、かけすぎると気持ち悪い歌声になるので、控えめにかけるのがお勧めです。

僕は、EQの後にかけることが多いエフェクトです。

ディレイ&リバーブ

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ディレイ&リバーブでオケに馴染ませていきます。

ディレイとリバーブは、共に空間系エフェクトと呼ばれ、文字通り音が壁等に当たって跳ね返る残響音をシミュレートしたエフェクトです。

他のエフェクトをかけた後、最終段階で使用する仕上げのエフェクトになります。

効果が高く、かけると気持ちいい音になるのでついつい使い過ぎてしまう傾向があるので注意してください。

基本は「最小限の使用」になります。そうしないと、オケと馴染まなくなってしまいますし、声が奥に引っ込んでしまう元にもなります。

それでは、ディレイとリバーブについてそれぞれご紹介します。

ディレイ

ディレイは、音楽制作でよく使われるエフェクトの一つで、音声信号を一定の時間遅らせて再生することで、エコー(やまびこ)のような効果を得ることができます。

結果、音楽や音声に広がりや深みを加えることができます。僕はコーラスの後、リバーブの前にディレイを薄くかけるようにしています。

よく使うタイプはBPMディレイです。使いすぎると声が引っ込んでぼやけるので、ほんの少しだけかけています。

リバーブ

リバーブは、音声信号に反響を加えて空間的な広がりを与える効果を持っているエフェクトになります。

リバーブを使用することで、音楽や音声が自然な空間で再生されているような臨場感を生み出すことができます。

ジャンルによっても違いますが、上記のディレイ同様かけ過ぎ注意です。僕はディレイの後にうっすらかけています。

色々なスピーカーやヘッドホンで聴いてみる

Museki
色々な再生環境で曲を聴いてチェック&修正します。

エフェクトをかけてボーカルとオケをミックスしたら、まずはWAVファイルに書き出して、色々なスピーカーやヘッドホンで聴いてチェックしましょう。

特に、オケとのバランスが良いかどうかをチェックすることが大切です。

モニタースピーカーや良いヘッドホンだけではなく、質の良くないものでも聴いてみることが大切です。安いヘッドホンやPC備え付けの安いスピーカーでも聴いてみて、バランスをチェックしましょう。

色々聴いてチェックすると、ミックスの修正点が見えてきます。特に、ボーカルが前に出過ぎor引っ込みすぎというのがよくありがちなので、注意してください。

それら修正点をDAWで修正して、完成となります。お疲れ様でした。

さいごに

Museki
ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回は、ボカロ調声の最終段階である「DAWでのボーカル処理」についてご紹介しました。しっかりと処理出来て初めて、今まで頑張ったボカロ調声が生きてきます。

他のボカロ調声記事と併せて、本記事を読み込んでいただけると嬉しいです。今回の記事が、少しでも作業のお役に立てれば幸いです。

最後にお知らせですが、本記事を含むボカロ調声記事のまとめが出来ました。以下からリンクしていますので、是非ご覧ください。

ボカロ調声のコツまとめ
【Vocaloid】ボカロ調声のコツ&テクニックまとめ【ボーカロイド】

それでは、ムセキでした。

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